病理検査結果報告

【診断名】


子宮:癌肉腫
膀胱基部腫瘤(しゅりゅう):コメント参照

※要は膀胱の根元にある腫瘍のようなかたまりのこと。



【組織所見】


子宮には平滑筋と子宮腺の腫瘍性増殖が認められます。前者は中程度の異型性を伴い、核分裂像は部位により散見されます。腫瘍細胞は紡錘系から多形成を呈し充実性に増殖しています。後者は中程度の異型性を示し、核分裂像は少数です。腫瘍細胞は単層から数層に配列し、不規則な腺腔や管腔を形成しながら増殖しています。筋層にやや浸潤性を示しています。本標本上マージン(-)であり、明らかな脈管内浸潤は認められません。卵巣に形態学的な著変は認められません。

膀胱基部腫瘤は内分泌腫様細胞(脾臓の中にある小さな細胞集団)の増殖からなります。これらの増殖している細胞は異型性が軽度から中程度であり、核分裂像はほとんど認められません。繊細な繊維性毛細血管結合組織に囲まれた胞巣内で柵状配列を形成しながらそして充実性に増殖しています。腫瘤中心部には広範囲な壊死が認められます。割による組織変更のためマージンの判断は困難です。



【コメント】


平滑筋肉腫子宮腺癌からなる筋肉腫(筋肉の癌)です。その形態学的悪性度は中程度です。本標本上、自潰(自然に破れて排膿すること)や脈管(血管とリンパ管)内浸潤(がん細胞が正常組織を破壊しながら病巣を拡大していくこと)も確認されませんが、しばらくの間は再発、転移に関する経過観察が必要です。特に子宮腺癌は子宮内膜にび慢性もしくは多発性に生じることがありますので、子宮断端部に関する経過観察も必要です。

上記所見から膀胱基部腫瘤は内分泌腺組織の過形成あるいは良性腫瘍と考えられます。本例において認められる細胞は副腎皮質腺(特に球状帯)にも類似しています。副腎皮質は発生の過程で横隔膜下から骨盤内に及ぶ後腹膜側の広い範囲に迷入することが希にあります(副副腎)。過形成や腫癌化することもヒトで報告されており、本例も可能性の1つとして考えられます。その他、泌尿生殖器系の発生異常組織から生じている可能性などが考えられます。いずれにしても悪性腫瘍として対処すべきです(形態学的には低悪性度ですが、臨床的挙動は把握できません)。

  • ふじこの血統書